私の勤めていた病院では、小児がんや先天性心疾患、自己免疫疾患など長期療養が必要とされる患児が多く入院していました。その中で、付き添いのあり方についてご家族から幾度も質問されたり疑問を投げかけられた事があります。中には付き添いが不要の病院もありますが、多くは病院から付き添いを求めているにもかかわらず、あくまでも家族が希望しているという書類を記入してもらって、付き添いを求めている病院が多いのではないでしょうか。特に最近はコロナで付き添い者の交代も制限されており、親の負担が増大している傾向にあります。ここでは、実際あげられた家族からの声と現場の看護師の意見、それを踏まえて看護師ができる事を考えていきたいと思います。
24時間付き添いを行う家族の声
・仕事を辞めなければいけない
・他の兄弟が心配
・患児から離れられない
・子育てをしながら治療を行うのは想像以上にしんどい
・プライバシーがないため、心が休まる暇がない
・社会的関わりが減少し、ストレスフル
もう少し細かく見ていきましょう。
仕事を辞めなければいけない
最近は共働きの家庭も多く、24時間付き添いを強いられると、夫婦のどちらかが仕事を辞めざるを得ません。 仕事を辞めると世帯収入は減りますが、病院と家の2重生活となるため金銭的負担は増える一方です。また、 治療によっては年単位の療養が必要となるため、退院しても復帰のめどが立ちづらい現状があります。近くに頼れる親類がいれば、みんなで協力して乗り越えることも可能かもしれませんが、転居してきた人、シングルの人など背景は様々です。どうしても付き添いが不可能な場合は、県を超えてでも付き添い不要の病院を探す必要があります。その場合、会いに行くことが難しくなり子どもにさみしい思いをさせたくないという思いから仕事を断念するケースもあります。
他の兄弟が心配
母親が入院に付き添う場合、母子分離が生じ、兄弟の生活環境にも大きく変化を与えます。その変化に動揺し、精神的に不安定になる兄弟も多くいます。赤ちゃん返りをしたり、学校で問題を起こしたり、言動が荒くなったり・・・そういった兄弟をケアしたくてもしてあげられる時間がありません。また、患児の病状についてどのように説明するべきか、受け入れてもらえるのかなど、 親は多くのジレンマを抱えています。
患児から離れられない
モニターや点滴、カテーテルなど、治療中の患児は様々な行動制限があります。危険な事を判断できる年齢の患児であれば、少し目を離すことも可能ですが、多くの場合はひと時も目を離せません。実際、目を離した隙に、カテーテルを引っ張ったり、噛んだり、転倒したり、頭をぶつけたりというインシデントが日常的におこっています。普通に子育てをしていても、危険は隣りあわせですが、治療中であればより慎重になることでしょう。また、大部屋で生活していると、周りに迷惑をかけまいと、子どもを泣かせないよう配慮している方も多いです。
子育てをしながら治療を行うのは想像以上にしんどい
普通に子育てをするだけで大変なうえ、治療や内服介助、検査の付き添いなど、多岐にわたって親の援助が求められます。内服時間や睡眠状況を調整したり、絶飲食をしたり、検査を一つ行うだけでもスケジュール管理が大変です。子どもが愚図っても、治療のためと心を鬼にして子どもと向き合っています。バタバタしている看護師を呼ぶのも気が引けて、一人で頑張っている方も多いです。
プライバシーがないため、心が休まる暇がない
付き添い中の親が唯一休める時間といえば、子どもが寝ている時です。とは言っても、その間にシャワーを浴びたり、ご飯を食べたり、トイレに行ったりと用事を済ませているため、実際のところはほとんど手放しで休める時間はない状況です。お風呂もつかれない、ご飯はコンビニや売店の惣菜ばかり、ベッドも添い寝か、簡易ベッドで疲れもとれない、いつ医療者が入ってくるかわからないので気が抜けない、そのため「人間らしい生活ができない」と話される親もいました。また、24時間患児と向き合っているため、逃げ場所もなく、心を休める事も難しいです。
社会的関わりが減少し、ストレスフル
ご家族からは「今までの友達も心配してくれるけど、やっぱり、病気の事は経験者にしかわからない」という話をよく聞きます。「世間話は元来の友達」「病気の事は、付き添いの親同士」と付き合いを区別している親も多いです。友達も以前のように気軽に連絡をとっていいのか悩み、親側も「気をつかわせるのではないか」と徐々に疎遠になっていく事もあります。また、患児を持つ親同士でも、一人ひとり病状も違うため、一線を引いて関わりを持つという方も多いです。一番の支えとなる家族であっても、離れて過ごす相手には十分に思いが伝わらず孤立を感じ、家族仲が悪くなる事もあります。自分の抱えている悩みや不安を気軽に吐き出せず、多くのストレスを抱えています。
24時間看護という事は、本当に壮絶な環境だという事がわかりますよね。
しかし、私たち看護師も何とかしたいという思いはありますが、現状はそうも甘くないのです。。。
次回予告
子供の付き添い入院~家族に寄り添うためにできること②
現場の看護師の声や看護師として何ができるかについてお話しします。
コメント